2012.11.4 〜明星山P6南壁フリースピリッツ〜
時間切れ12ピッチ目撤退

登ったルート
場所
新潟県糸魚川市大字小滝


駐車場・登山口
小滝川ヒスイ峡の駐車場(無料トイレ紙あり、20台程度)


登山行程
0611駐車場-0635取り付き-0720A終了点-0744B終了点-0830C終了点-0852D終了点-0932E終了点-0956F終了点-1037G終了点-1109H終了点-1143I終了点-1213J終了点-1244/1342K終了点-1550下降終了-1611駐車場


参考資料
今回のグレードは「チャレンジアルパイン」を参考にしました。

なぜこの山?
「おちゃらけ山岳会」と揶揄される所属山岳会であるが(←被害妄想?)、今回、うりうとMさんの(所属山岳会では)最強と勝手に思っているペアで、フリースピリッツのオールオンサイトをやり、「普通の」山岳会として認めてもらおうというもの。

合わせて、うりうの今年最強の「挑戦的日帰り登山」として、ここを選びました。

ただ、翌日が仕事なので、最終終了点には遅くとも15時に到着する計画で登ります。理由として、二人ともフリースピリッツは初めてであるので、絶対に日中行動としました。

<過去の明星山の山行>
なし。

<用語解説>
アンカー:確保支点のこと。ここで、懸垂下降したり確保したりする。
オンサイト:初めてのルートで落ちずに登ること。ハーケンなどの支点に体重を掛けてもダメ。
カンテ:岩の飛び出た部分
コンテ:ロープは結び合っているが、確保せずに二人が登ること。
ジャム(ジャミング):割れ目に手や足を入れて、それを使って登る方法。
スタッカート:一人が確保しもう一人が登ること、普通の登攀はこの方法。
トポ:トポグラフィー。ルート図。
プアプロ:poor protectionのこと。落ちても耐えられない支点の状態。
フリーソロ:安全確保の方法と一切採らず登ること。落ちたら死にます。
NP:ナチュラルプロテクションの略。カムやナッツなどを割れ目に入れてプロテクションとし、通常のボルトプロテクションより技術が難しい。





登山口までの移動・登山記録
出発前日であるが、早く出発したいうりうであるが、家族サービスの一環として「夕食を一緒に食べる」ということをやり、自宅出発は18時頃となってしまった。

前日にMさんをピックアップして、所沢ICから関越道に乗るが・・・

事故渋滞。(と、出鼻をくじかれる)

という訳で、関越道→圏央道→中央道→長野道→上信越道→北陸道(400km以上、でも高速代は従来どおり)と走り、糸魚川ICで下りたが、今度はガソリンがすごい微妙な量しか残っておらず、冷や冷やしながら、小滝川ヒスイ峡の駐車場に23時過ぎに到着した。

月明かりの中に浮かぶ明星山P6南壁が見え、「明日はこれに登るのか・・・」と、テントをたてて眠りにつく・・・

はずが、寒さのためほとんど眠れなかった。

当日は4時起床したが、まだ暗闇だったので、車の中で仮眠。寒いがガソリンが足りないためエンジンはかけられず。

今度は、寝てしまったため、6時頃に目が覚めた時は・・・

十分すぎる明るさになってしまいました。(なんかちぐはぐですな)
月明かりに浮かんでいたビッグウォールは明るくなったらこんな感じでした。
駐車場のまん前の「立入禁止」の看板がある踏み跡を下りていく。
河原についたら、靴を脱いで渡渉しました。
探し回ったところ、ここが取り付きのようです。



準備をして「1ピッチ目III級(20m、本来は40m)」うりうリード。
前日までは雨だったので、草は濡れており、岩は全くフリクションが効かず、こわごわ登る。



20mぐらい登ったところにリングボルト2本のアンカーがあったので、ピッチを切ってしまった。



一応、オンサイトです。
「2ピッチ目IV-級(40m、本来は20m)」はMさんリード。



本来の1ピッチ目終了点からすぐのところが核心で、足が濡れているため、やっぱり怖い。
さて、ここからが下部の核心が続きます。



「3ピッチ目V+級(30m)」うりうリード。



最初見たとき、左のハングを登るかと思ったが、よく見たら右のフレークが楽そうなので、そこを登る。
V+級であるが、冷静に登れば難しくはなく、オンサイト。



残置ハーケンもあったと思うが、事実上「5.8NP」のルートでした。



使ったカムは#1と#0.75キャメで、あとはスリングだったと思う。(不確実)
「4ピッチ目IV+級(30m)」Mさんリード。



右上するルートであるが、スラブに染み出しがあり、そこに足を乗せて突破しなければならない所が怖かった。
ここのハング下が終了点。
これが5ピッチ目で、ハング下を左にトラバースします。
「5ピッチ目V-級(20m)」うりうリード。



これはMさんに撮っていただきました。
5.6〜7ぐらいなので、オンサイトです。



ハーケンもあったので、使用したと思う。
「6ピッチ目V+級(15m)」Mさんリード。



見た感じ、嫌らしいピッチですね。
最初の垂壁が核心でV+級のグレードがついている感じ。

でも、プアプロなので怖いですね。(なお、お助けロープがありました)
先ほどの写真からは右に下って終了点へ。



フォローのうりうは、回収した後は落ちられないのでちと怖かった。
「7ピッチ目V+級(30m)」うりうリード。



二回目のV+級リードはルートファインディングが重要でしたね。



写真のフレークを越えた後、右のカンテを越えていきました。
そんでもって、オンサイト。



3ピッチ目と違って、ハーケン多数。(使用しました)
ハーケン2個の終了点。(終了点探しで少し迷う)

本当にこれで正しいか確信がなかった。
やっと駐車場ぐらいの高さまで登りましたね。
「JADE」を登るクライマー。



最高5.11aでムズイ。
「8ピッチ目IV+級(40m)」Mさんリード。



写真の凹角が核心で・・・
登り終えると、岩稜歩き。



ただ、ガレガレです。
写真の所にハーケンがあったので、Mさんはここでピッチを切る。



「9ピッチ目V級(30m)」うりうリード。でも、どこ登るのか分からない。



写真のように登りました。





ただし、登ろうとすると岩が動き・・・を繰り返す。

しかも、カムをきめても、事実上墜落を止められる感じはしない。





写真の人(JADEを登っている人)がなんか言っているが、全く聞こえない。



(8ピッチ目終了点からの写真)
事実上フリーソロでオンサイト。(オンサイト以外は「死」)



いや〜、しびれましたね。
ここにアンカーがあったのでピッチを切った。
ここからの景色。(上部岩壁)



以上のように登るはずだが、登りはじめると全く分からない。
ここから下を撮る。
右を撮る。



南の北アルプス方面。
「10ピッチ目II級(20m)」。



Mさんはガレ場をコンテで登ることを提案したが、うりうはガレ場といえども滑落したら河原まで落ちるので、スタッカートを主張。



結果として、スタッカートで御覧の通り登る。
Mさんはここ付近の木でビレイ。
「11ピッチ目III級(50m)」うりうリード。



ルートが非常に分かりづらい。
ここからの景色。
うりうが登っている写真。(Mさん撮影)



ルート取りが分かりづらかった。
オンサイトですが、III級にしてはいやらしかった。
着いたところはJADEのアンカーがあるところ。うりうは木でアンカーをとった。

ここに吸い寄せられてしまいました。(これが間違いかも)
「12ピッチ目VI+級又はV+級/A1(30m)」Mさんリード。



JADE(このピッチは5.10c)のわずか左を登るが、トポのV-級とは思えないぐらい難しい。
フォローのうりうは下から3/4程度は、5.10a程度でフリーで登れたが、最後は激ムズ(というよりは登れない)なので、ボルトラダーをAOで突破。



多分、「ダイレクトルート」に入り込んだと思う。こんなんだったら、JADEを登った方がよかったぐらい。
結局、JADEのアンカーで確保。

この時にマニフェストを登ってきた後続バーティーに抜かされてしまいました。





うりうの推測であるが、11ピッチ目はもっと手前でピッチを切り、直上するのが正規のフリースピリッツだったのかも知れない。





12ピッチ目終了点に着いたのは12:44で、まだ15時までには余裕があったが・・・

抜かしたパーティーが次の「パノラマトラバース」に時間がかかり、1時間ぐらい待ってしまった。
ここでMさんと相談。



この先も渋滞している可能性があり、15時に山頂に着くのは無理と判断し、ここで撤退となった。



なお、ここから先に行った場合は撤退はできません。
大変残念であるが、ここから懸垂下降を繰り返し帰ることに。



これはこれでまた時間がかかるね。
これは懸垂下降二回目かな?
他のパーティーも続々と懸垂下降で帰る。



うりうのパーティーは一番右のボロいアンカーをつないだため、捨て縄1とカラビナ3を寄贈することになった。
これは最後の懸垂。



でも、地上に着けると思うとホッとするね。
日没前の16:11に駐車場に戻れました。

残念だったけど、生きて帰れることがなによりです。





Mさん、お付き合いいただき誠にありがとうございました。





帰りにルートを撮る。



これは取り付き付近。
これは上部。





帰りは順調で、21時過ぎにさいたま市に戻りました。






フリースピリッツ所感
所属山岳会として、誇れる山行として企画したが、結果としては12ピッチ目時間切れ撤退となってしまいました。しかしながら、翌日仕事という制限がなければ全然登れたルートであるので、「敗退」とは思っていない。

このルートを突破するには、体力、登攀技術は当然ながら、ルートファインディング力、脆い岩を見抜く力、極めつけは「精神力」が必要でないかと思う。

ロングピッチをやっていると、徐々に疲れも出てきて、一歩先に進もうという意欲が低下してきます。実際、V+級3ピッチ、V級1ピッチなど、ほとんどがIV+級以上を登ってくると気分的に萎えてきます。そこをふりしぼれるどうかが成功の秘訣ではないかと思う。

今年はこれ以上家族には迷惑かけられないし、今年の挑戦的日帰り登山は終了である。

この日の結果
1ピッチ目III級(20m):オンサイト
2ピッチ目IV-級(40m):フォロー
3ピッチ目V+級(30m):オンサイト
4ピッチ目IV+級(30m):フォロー
5ピッチ目V-級(20m):オンサイト
6ピッチ目V+級(15m):フォロー
7ピッチ目V+級(30m):オンサイト
8ピッチ目IV+級(40m):フォロー
9ピッチ目V級PD(30m):オンサイト(というかほぼフリーソロ)
10ピッチ目II級(20m):フォロー
11ピッチ目III級(50m):オンサイト(ロープを伸ばしすぎた?)
12ピッチ目VI+級又はV+級/A1(30m):フォロー(ダイレクトルートに入り込んだと思う)

PD:protection difficult。プロテクションがあまり利かない。

今回登山で学んだこと
・残置支点は基本的にハーケン。
・カムは0.5〜1キャメロット1セット程度(マイクロは利かない、大きめは要らない)。
・ヌンチャクは10個程度(アルパインヌンチャクが多めがよい)。
・スリングは多めがよい。
・アンカーはリングボルト・ハーケンなので安全性と見落としに注意。
・ロープはダブル。
・岩は比較的脆い(特に9〜10P目)、中央バンド付近からの落石は多い。
・ジャミングはほとんど使わなかった。
・撤退は12ピッチ目終了点までで、その先は上に抜ける方がよい。


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